アスカルゴルタという名前を聞いたことがある、または知っているという日本のサッカーファンは多いことと思います。
そう、以前横浜マリノスの監督も務めたことがあるスペイン人の監督です(現在はメキシコのチバスの監督←たぶん?)
こちらで2ヶ月に1度出されている日本でいう
サッカークリニックのような雑誌があるのですが、その雑誌のインタビューで彼がこれまで指導してきた、スペイン、ボリビア、チリ、日本についての印象を語っていました。
特に日本についての意見は非常に面白いと思い、そして是非とも皆さんにも読んで頂き、感想を聞かせて頂きたいと思い
気合を入れて訳させて頂きました。
外国人、それも日本で指導したことがある監督の日本に対する印象。興味深いではありませんかぁ!!!
では、非常に長いですが・・・読んで頂ければと思います m(__)m
注)誤字、脱字、訳し間違えに対する
苦情、お問い合わせは勘弁してください (笑)
日本について アスカルゴルタ
現在もっとも急速な勢いで発展している国の1つである日本。経済は豊かで生活に困ることなく、サッカーでプロ選手にならなければ生活できないということはなく、それこそ南米の国々のようにサッカーに人生の全てを賭ける必要がない。もちろんサッカー選手として活躍することはより華やかな人生を送れる可能性はあるし、プロ選手になることは一種の名誉であるが。
まず彼らの礼儀正しさ、行儀良さは何かを学ぶという点で非常に有利に働いていると思う。日本人はいつも自分自身の限界に挑戦し、とにかく向上しようと試みている。よって必要とあらば何時間でも練習するし、おまけに年上の人への尊敬、尊重する気持ちは強く、監督ともめるような行動はまず起こさない。しかし、彼らと付き合うのには細心の注意が必要だ。皮肉や嫌味を言われることを酷く嫌い、面と向かって批判する、更に声を荒げ、恥をかかせるようなことをされると一気に心が離れて行ってしまうからだ。
誰かの言うことを聞く、従う準備は非常に良く出来ており、しかし、それによって自分自身で決定を下すことが苦手でもある。方眼紙に言われた通りに書くのは得意だが、白紙に自由に書いても良いと言われると何を書いて良いのか分からないと困惑してしまう。
常に継続して行うことを好み、何をする時でも合図、もしくは指示が必要だという印象を持った。
優秀なサッカー選手はまるで芸能人のようで、たくさんのファンが彼を取り囲む。
日本にはチームのサポーターはおらず、いるのはファンだ。観客の多くが女性でサッカー選手をアイドルのように崇める。おまけに好みの選手が移籍するとその選手のファンである彼らも好きなチームを変える。分からなくはないが、ヨーロッパではなかなかそういうことは起こらないだろう。
愛国心は非常に強く、日本代表に誇りを持っている。代表戦となるとどんな試合であろうと異常な盛り上がりを見せるし、スタジアムは常に満員になる。それは対戦相手がどこであれそうであり、それが弱年層(オリンピック、ユース)でも同じなのだ。
それによって日本代表選手は大きな責任を感じ、それを名誉に思っているに違いない。
日本では高校卒業をし、すぐにプロの選手になることが比較的多い。当然そういった選手は小さい頃からすでに目立った存在で注目されていることがほとんどだ。
面白いのが毎日のように練習している選手達はサッカーで要求されることと比べて勉強に関して要求されることがあまりない。なぜなら彼らの多くはすでにプロの選手になることを決めているから「サッカーを一生懸命やっていれば、勉強が出来なくても良い」という風になっているのかもしれない。
それに学校単位でプレーしている選手がほとんどであるため、その先生でもあり、監督でもある指導者との結びつきは非常に強い。学校の先生をしながら指導している指導者はその選手の将来にとっても大事な存在となり、選手に与える影響は計り知れない。
私が一度古賀と本山という高校生2人と会う為に福岡に行った時の話だ。古賀はすでに私のチーム(横浜マリノス)と契約を結ぶことが決まっていたのだが、本山の方はまだ私達からのオファーに迷っていた。私がわざわざ福岡まで出向いたのは本山を説得する為であり、彼はその時点で私が見た選手でもっとも才能に溢れた素晴らしい選手だった。本山は私が直接会いに行ったことを非常に喜び、私にこれ以上無いほどの感謝の気持ちを表してくれたが、その後で当時彼が所属していた高校の先生が薦めてくれているチームと契約するのだと私に言った。そして、本山と話しをした後に私は監督と話をし、それが鹿島アントラーズであることを知った。そう、ジーコのチームだ。
その理由として監督は自分の選手達を出来るだけ色々なチームに分かれさせたいと話した。そう、私のチームにはすでに古賀が来ることが決まっていたのだ。だから、本山に横浜マリノスではなく別のチームを推薦したのだろう。結局本山は鹿島アントラーズに入団し、その後彼を見たのはナイジェリアで行われたワールドユースで日本がスペインに敗れ準優勝した時だった。(モトヤマは大会ベストイレブンに選ばれた)
私は日本人が本来持っている身体能力は高いレベルにあると思うし、特に持久力、アジリティー、そしてスピードには正直驚かされた。パワーの面でも悪くはないが、もっと優れているのはやはりその瞬間的な速さだ。そして体力向上のためには如何なる犠牲もいとわず、苦痛に耐える能力は恐ろしいほど強い。テクニック面でも非常に鍛えられているし、1つの動作を取得するため、そして改善、向上するためなら何度でも同じことを繰り返すことが出来る忍耐力を持っているし、こちらからの要求も、それで飽きたり、疲れたりしない。
そのためか選手1人1人の即興性というか臨機応変さに欠ける気がする。
何をするのかは知っているがそれをいつするのかを知らない。
華麗なプレーが大好きで、そのせいか時々魅せるためだけのプレーすることがあり、本来何のために相手を欺くのかという本質を見失っていることがある。ドリブルの能力は高いが、ロングパスとシュートの精度が極端に低い。それからヘディングの技術もこれから向上していかないといけないだろう。戦術に関してはまだまだというのが現状で、これから大いに改善の余地があると思うし、しっかり取り組んでいかないといけない。
自分で決断を下すことが嫌いで、誰かに指示されることを好む傾向にある。試合もポジションから全部指示しなければいけない。白紙に何か書く、つまり自分で想像するということを知らないため、毎回方眼紙を用意し、それぞれ書くところを指定しながら書く内容もこちらから指示しなければいけない。攻撃的な要素についてはすぐに会得するが、守備の原則を叩き込み、実際に出来るようになるまでは時間がかかるようだ。
なんでも監督に服従する選手が多く、それも、また異常なほどであるため、日本にいた時に記者会見でこう言ったことを覚えている
「私は日本人に命令に背くことを教えたい」とね(笑)よって私が思うに日本人が自分で決断する力を身に付ければ、すぐに世界の強国の仲間入りすることは間違いないし、あの勤勉さを持ってすれば、それがそう遠い未来でないことは確信している。