DIARIO del ESPANYOL(スペインサッカー現場の目より):第18章 下部年代での選手契約とその将来...
ここスペインでは下部年代でほとんどカテゴリーのリーガ(年間を通したリーグ戦)が開幕した。スペインだけではなく、他のヨーロッパの国々の下部組織のリーグ戦もここスペインと同様に開幕してるはずである。ここヨーロッパではトップだけではなく下部年代の年間カレンダーもヨーロッパ中でほぼ同じである。それもあり、9月からのリーグ開幕前の交流大会や、イースターでの交流大会、また6月のシーズン終了後の交流の大会と、国をまたいでの交流がしやすくなっている。我々のチーム(ユース)は、イースターにはドイツへ(日本高校選抜が出場してる大会へ)、シーズン終了後には、イタリアのベネチアで行われる大会に参加するとの事である。
さて、我がチームは4節を終わった時点で、3勝1分(勝ち点10)で2位に付けている。同節でライバルのバルサがホームで負けた為、勝点差は3になった。(バルサは勝点7)バルサとの直接対決まで取りこぼしのないようにしなければならない。まだリーガは始まったばかりである....
さて本題へ...
先日の事である。とあるスペイン人選手(15歳)が、エスパニョールに練習参加しに来た。別にたいした事ではなく、良くある事である。
ただいつもと違うと感じさせたのは、彼の周りには、スーツを着たいわゆる代理人、両親、そしてエスパニョールの強化部長...が居た事である...そして練習参加前、ここに初めて来たにもかかわらず、エスパニョールの同年代の選手達(その年代の代表選手達)と挨拶して親しく話しており、後で聞くと、彼はその年代のスペイン代表選手であるとの事。
昨年のカデッテ(15~16歳)のスペイン全国大会優勝メンバー(サラゴサ)であり、この年代において、スペイン国内で最高の中盤の選手?!だとの事である....
レアルマドリー、バルサ、バレンシア、ビジャレアル、アトレチコマドリー、エスパニョール...が昨シーズンから追いかけていた選手である。(プロクラブのスカウト達の間では彼を知らぬ者はいなかったと言う...)
良くある話であるが、在籍していたサラゴサ(スペイン1部リーグクラブ)との間で、他のクラブからの誘いがあるとの事で、今よりよりよい条件(待遇)を求めいろんなクラブと交渉していたのである。当然素晴らしい選手なので各クラブは欲しい訳で、選手側からしてみれば一番良い条件を示した所に行く...ただ各クラブ達を面倒にしてるのは間に代理人が入ってる事であろう。
一度エスパニョールの練習に参加した時、受け持つ予定の監督いわく、ほぼ契約するとの事でかなり喜んでいた。が、翌日その選手の姿はなかった...交渉決裂したそうである...しかし...その1週間後、彼が再びエスパニョールの練習場に姿を出した。足の傷の手当てでメディカルルームを強化部長と訪れ、強化部長直々にこの傷の手当てしてくれとの事で、たまたま居た自分が手当てをした。
事のなりゆきを知っていたので、手当てしながら彼に“結局エスパニョールと契約したの?”と聞くと“うん契約したよ...いろいろと複雑だったけどね...”とR.マドリーやバルサを差し置いて良く契約したなぁ......と関心していた。
(エスパニョールの下部組織の選手に対する待遇(金銭的その他)はバルサやR.マドリーと変わらないのである)
ところが、ところがである....それ以降また彼が来なくなった...一緒に練習していた選手達に聞いても、なぜ来なくなったのか分らないと言う。監督と話をすると再び、交渉決裂したとの事である....
ちなみに彼に対するエスパニョール側の待遇は、特別なもので、金銭的なものは置いといて、普通スカウトして取ってきた選手は、クラブ所有の寮に入るのであるが、彼の場合は親までバルセロナに呼んで住居も提供だったとの事である...バルサ等他のクラブがスーパーな選手達に対して行う待遇である。
そして、つい先日のスペインスポーツ新聞(全国版)に、彼がアトレチコマドリーと契約した...という記事がでかでかと載っていた。そうあのフェルナンド・トレス、ケズマン、監督はビアンチ(今期より)が居る名門クラブである。
親も一緒にマドリードに移り住んだそうである。
また昨日の新聞には、下部組織において彼を獲得する事に成功したアトレチコマドリーにおいて、クラブ内での話題として...“Cuanto cobra?”(金をいくら貰ってるの?)“Es tan bueno?”(そんなに良い選手なの?)だそうである....
間違いなく言える事として、現時点において素晴らしい選手であるのは、前途のクラブ達が追っかけてた事が全てを物語っている。
自分もエスパニョールにおいての2回の練習参加の様子は見た。一緒にやっていた選手達に言わせると、とても良い選手だそうである。
バルサのメッシーしかり、ジオバンニ(メキシコ人、先日のU-17世界選手権にてメキシコの優勝に貢献、バルサユース所属)しかり、彼らがプロ契約まで辿りつき、それがクラブにもたらすメリットを考えると、それらに費やした金というのはたいした事ないのかもしれない。いわゆる先行投資であり、もしその選手がプロになれば十分元が取れる...と言う訳である。
アトレチコマドリーと契約した彼の名前は“ナッチョ・カマーチョ”
果たしてアトレチコマドリー、またはスペインの将来を背負う選手になるのであろうか....
松井真弥 1971年広島生まれ 千葉にある某整形外科に勤務しつつトレーナーとして、いくつかのサッカーチームと関わる。2000年、本場のフットボール、プロクラブ内部を生の目で見るのと、スペイン語でやり取りが出来るトレーナーを目指し渡西。現在バルセロナにあるプロクラブ“エスパニョール”に在籍し選手のケアをしてる。