DIARIO del ESPANYOL(スペインサッカー現場の目より):第18章 用具について...(外傷・障害の視点より)
サッカーをする上で、選手達はいくつかの用具等を着用・使用してプレーするが、その中でも重要な物として①スパイク(las botas)、②スネアテ(la espinillera)について今回は話たいと思う。
ここスペインでは町の中いたるところにサッカーグランドがある。土のグランド、芝のグランドもあるが、毎年のように人工芝(最新式)に張り替えるグランドが増えているのが現状である。今年関わっているユースのリーグ戦にて、グループの18チーム中、土のグランドは僅か2チームだけである...
この人工芝におけるデメリットについては、今いろいろと調査・研究されている所でもある。足関節、膝、腰への負担、急激なストップによる足関節、膝の捻挫の可能性....
しかしそれ以上にメリットである、グランド整備不要(芝のグランドのような管理不要)、雨天でも練習可、土で汚れない、ボールコントロール、パスの練習に最適...とトータルで見てはるかにメリットの方が有用であるのは言うまでもない。これらの人工芝で練習してると土のグランドでプレーしたくなくなるものである...
今期よりエスパニョールでは“DEPI”(クラブ内にある研究部門、コラム15章参照)が下部組織の選手達に対して“Multitacos”(日本で言われてるのはマルチスタッド?)のスパイクを履くようにと勧めた(というより義務ではあるが..)無論、外傷・障害の予防である。
この“Multitacos”(画像参照)のスパイクは、まさに人工芝用のスパイクと言っても過言ではない。ポイントが多く、またその高さも高くなく、選手達の負担が少ないのである。
ここスペインのスポーツ店ではこの“Multitacos”のスパイクが普通のスパイクと同じ程度の割合で売られているものである。最新の人工芝は長さがあり、いぼ付きのトレーニングシューズでは滑る可能性があり、無論普通のスパイクでもプレー出来る。が、この“Multitacos”は普通にプレー出来かつ、それらの障害の予防にも貢献でき是非推奨できるものである。ちなみに我がユースではこのタイプのスパイクじゃないと罰金である...
さてスネアテについてであるが、この夏にエスパニョールのグランドでクリニックをしたのであるが、その千葉県選抜の少年達が付けていたスネアテを見た、こちらのコーチが“なんだこりゃ?...これはスネアテか?...”と自分に聞いて来た。いわゆるスネの部分だけをカバーしており、かつ異常に小さい...“これは股間を守る物だろ?...”と冗談を言ってたが。それらは実際に日本で売られている物である。
こちらの少年達が使用してるのはスネアテと言うのはアンクルガードが一体となってる物である。日本でスネアテと言えば、ほとんどの人達がスネだけをカバーする物をイメージするが、ここではアンクルガード付きのがスネアテである。
無論スネアテだけのも売られているが、ここで売られているほとんどがアンクルガード付きの物である。逆に日本ではアンクルガード付きのスネアテを探す方が大変かもしれない。
アンクルガード付きのスネアテは“付ける”と言うより“履く”と言った方が適切であろう。ジュニアはともかく、ジュニアユース以上になると、結構足を“削り”に来る場合がここではある、ユースになると相手のタックルにより良くストッキングに穴があいて破れるものである...さらに上のレベルとなると、相手のタックル(と言うより削りに来る)により、足の部分の皮膚がえぐれている場合もある。
そういった事を予防する上での、こういったアンクルガード付きのスネアテが生まれたのであろうが、上の年代になるにつれこれを付けるに越した事はないであろう。
ただこちらの選手も、アンクルガードがじゃまで、自分でその部分を切ってる選手もいるのも事実である。日本では、そのようなタックルがそれほど頻繁にみられないので、日本のスネアテでいいのかもしれないが、ここではアンクルガード付きの方が無難であるのは言うまでもない。
余談ではあるがこちらのトッププロともなると、各選手の足形に合わせて各々スパイクの型を取ってるのはご承知の通りであるが、ここでは職人による手作りのスネアテも存在するのである....何人かのプロ選手は、カーボン製の各々のスネの形に合わせたオリジナルのスネアテを付けているとの事である....
松井真弥 1971年広島生まれ 千葉にある某整形外科に勤務しつつトレーナーとして、いくつかのサッカーチームと関わる。2000年、本場のフットボール、プロクラブ内部を生の目で見るのと、スペイン語でやり取りが出来るトレーナーを目指し渡西。現在バルセロナにあるプロクラブ“エスパニョール”に在籍し選手のケアをしてる。