サッカー選手に必要な体力要素として基本的に、
①スピード(la verosidad):一定の距離を速いスピードで走る能力
②パワー(la fuerza):止まっている状態からジャンプしたり、ダッシュするなどの能力
③持久力(la resistencia):90分間走り続ける能力
の3つが挙げられるのはご承知の通りである。
今回はエスパニョールで全カテゴリーの選手達に実施されている、フィジカルテストをご紹介したいと思う。
これらのフィジカルテストを担当しているのは、クラブ内にある研究部門“Departamento de Planificacion e Investigacion”(直訳すると、研究と計画の部門。通称DEPIと呼ばれてる)に属するフィジコ達である。エスパニョールでは数年前にこの部門がクラブ内に発足し、4人の専属フィジコ(体育大学卒)が、練習と体力トレーニングの関係、育成期の選手の成長度、その他の研究をしているものである。(無論サッカーを指導出来るレベルのフィジコ達である)この部門の部屋は総合練習場の監督達の更衣部屋の隣にあり、各カテゴリーの監督達は、この部屋を頻繁に出入りし、フィジコ達といろいろとコミニケ-ションを取っているものである。
さてそのフィジカルテストの内容であるが。
①スピード → 30m走 (写真参照)
②パワー → 垂直飛び(写真参照)
③持久力 → 持久走“Course Navette” である。
③の“Course Navette”についてであるが、簡単に言うと、20mのラインの間を、行ったり来たりし、機械のブザーと同時にラインにたどり着かなければならない。最初は非常にゆっくりとしたペース(6.5km/h)から始まり、1分毎に0.5km/hずつ、スピードがアップしていく。(ブザーの鳴る時間の間隔が短くなっていく)
次のブザーが鳴る時に、ラインにたどり着けないと本人が自覚した時点でその選手はテスト終了である。走るのを止めてよい。
その時の時間(約10分~14分)がその選手の記録である。
無論、心拍計を選手に付けさせ、データを取っている。
実施する順番として、まず始めに垂直飛び→30m走→持久走である。無論、実施前の十分な準備運動はいうまでもない。(以前30m走の際、ユースの選手がアップ不足にて大腿四頭筋腱がはく離してしまった経緯がある...)
シーズン初めには、各カテゴリー一斉にテストを行い、当たり前であるがその結果を各選手達にフィードバックしている。各テストのデータ結果をプリントアウトし、それを監督達が選手に見せ、個人的に話しているものである。
そのデータ結果には、各選手の記録、そのチーム内での順位、チームの平均値、上位と下位で色分けされており。各々選手自身が現時点での自分の体力的要素を把握し、自分に足りない物が自覚できるものである。また監督達にとっても選手を把握する上で貴重なデータとなるわけである。
無論、育成期という事もあり、シーズン中盤、終わり頃に実施した時のデータは始めの時期と比べて、その選手の成長度として評価できると言う事はいうまでもない。
以上の3つのテストであるが、実施するのにそんなに難しくはないと思われる。
エスパニョールやその他のプロクラブでは特殊な装置でタイムを取ってるが、30m走は一般のストップウォッチでもいいだろう。垂直飛びにしても、指に印をつけて壁にジャンプさせて付けさせそれを計ればいい。持久走のcrous navetteは、やり方は違うにせよ、クーパー走でもいいであろう。
一度日本の皆さんのクラブの少年達に対し、このようなフィジカルテストを行ってみてはどうであろう....日本にもすでにいろいろなタイプのフィジカルテストが存在しており、簡単にグランドで出来るものをチョイスしてみるのもいいであろう。その年代での各選手達の体力的要素がわかると言う物である。監督達は自分達の選手の事をより把握できると思うし、新たな発見があるであろうと思われる。
レアルマドリーが今期のプレシーズンに行った30m走の結果としてあのロナウドは、3.88秒?!だそうである...あのオーウェンでさえ4秒切るかどうかのタイムであるのに...彼のダッシュ力は見た目通りずば抜けているのである...
松井真弥 1971年広島生まれ 千葉にある某整形外科に勤務しつつトレーナーとして、いくつかのサッカーチームと関わる。2000年、本場のフットボール、プロクラブ内部を生の目で見るのと、スペイン語でやり取りが出来るトレーナーを目指し渡西。現在バルセロナにあるプロクラブ“エスパニョール”に在籍し選手のケアをしてる。